静岡市清水区の川の上流に位置する山里で育てられた茶。起伏に富んだ地形は山もあり谷もあり、決して平坦ではない。しかし、木立の間を流れる風や清流からわきたつ山霧。霧により日光を遮ることで日差しはフィルターをかけられ優しく降り注ぐ。知る人ぞ知る「銘茶の隠れ里」だ。この隠れ里で茶を育て、日本最大の品評会「全国茶品評会」で入賞経験もある細川氏の銘茶。

品種はやぶきた。1953年に登録された品種で日本で栽培されている茶の約75%を占める。漢字では「薮北」と書く。1908年、静岡県の茶農家・杉山彦三郎が自己が所有する竹薮を切り開いた茶園から優良な品種2本を選抜した。薮の北側から選んだ1本を「やぶきた」、南側から選んだ1本を「やぶみなみ」と名付けた。2本の茶樹の実験と観察を続け「やぶきた」が霜に強く従来の品種よりも早い4月下旬から5月上旬に安定して一番茶の収穫ができることが分かった。約50年後、静岡県の奨励品種に指定されたことをきっかけに急速に普及し現在に至る